胸膜中皮腫
胸膜中皮腫とは
肺の表面を覆っている膜(胸膜)より発生する悪性腫瘍です。アスベスト(石綿)の暴露が原因になることが多い腫瘍です。アスベストを吸ってから悪性胸膜中皮腫が発生するまでの期間は、平均で40年ほどとされています。
胸膜中皮腫の症状
胸に水が溜まることで呼吸苦や胸痛の症状がでることが多いです。
検査と診断
胸部X線写真(レントゲン)
検診などでまず行われる検査です。胸水の有無や胸膜肥厚が分かります。
CT検査
胸膜中皮腫の部位・大きさを調べる検査です。リンパ節転移の有無も評価します。
PET-CT検査
胸膜中皮腫の進行度を調べる目的で行われます。転移の有無などを調べます。
腫瘍マーカー
血液検査で肺がんの患者さんで高値となることが多い項目です(胸膜中皮腫だと必ず高値となるわけではありません)。胸膜中皮腫の腫瘍マーカーとしては、可溶性メソテリン関連ペプチド(SMRP)がよく使われています。
細胞診・組織診断
胸膜中皮腫の診断は細胞を顕微鏡で見ることで確定します。
- 胸腔鏡検査(生検):全身麻酔で行われます。直径5mmほどの内視鏡カメラを側胸部の胸の傷から挿入して胸の中を観察し、胸膜中皮腫が疑われる部位の組織を採取します。
- CT下肺生検:CT検査で見ながら、皮膚側から胸膜中皮腫が疑われる部位に針を刺して、針の中に入った細胞を調べます。
上記の検査でも胸膜中皮腫の細胞が見つからないこともあります。画像で胸膜中皮腫が強く疑われる場合など、総合的に判断することもあります。
胸膜中皮腫の種類(組織分類)
胸膜中皮腫を顕微鏡でみると大きく3つの種類に分けられます。上皮型と二相型、肉腫型です。
胸膜中皮腫の進行度(病期)
次の3つの因子で規定され、予後との関連が指摘され、治療法の選択にも関係します。
T:肺がんの大きさや広がりの程度
N:リンパ節への転移の有無
M:遠隔転移の有無
T—原発巣
同側胸膜(壁側または臓側胸膜)に腫瘍が限局(縦隔胸膜,横隔膜を含む)
T2:
同側胸膜(壁側または臓側胸膜)に腫瘍があり,以下のいずれかが認められる
- 横隔膜筋層浸潤
- 肺実質浸潤
同側胸膜(壁側または臓側胸膜)に腫瘍があり,以下のいずれかが認められる
- 胸内筋膜浸潤
- 縦隔脂肪織浸潤
- 胸壁軟部組織の孤在性腫瘍
- 非貫通性心膜浸潤
同側胸膜(壁側または臓側胸膜)に腫瘍があり,以下のいずれかが認められる
- 胸壁への浸潤(肋骨破壊の有無は問わない)
- 経横隔膜的腹膜浸潤
- 対側胸膜浸潤
- 縦隔臓器浸潤(食道,気管,心臓,大血管)
- 脊椎,神経孔,脊髄への浸潤
- 貫通性心膜浸潤(心嚢液の有無は問わない)
N—リンパ節
N0:
所属リンパ節転移なし
N1:
同側胸腔内リンパ節転移(肺門,気管支周囲,気管分岐部,内胸など)
N2:
対側胸腔内リンパ節,同側または対側鎖骨上窩リンパ節転移
M—遠隔転移
M0:
遠隔転移なし
M1:
遠隔転移あり
病期
上記T、N、M分類の組み合わせで肺がんの進行度(病期・ステージ)が決まります。
N0 | N1 | N2 | |
---|---|---|---|
T1 | StageⅠA | StageⅡ | StageⅢB |
T2 | StageⅠB | ||
T3 | StageⅢA | ||
T4 | StageⅢB | ||
M | StageⅣ |
胸膜中皮腫の治療法
胸膜中皮腫の種類や進行度(病期・ステージ)を見て治療法を決めます。手術、薬物療法、放射線療法が主として行われます。
手術
胸膜肺全摘術、胸膜切除/肺剝皮術に分けられます。
薬物療法
点滴で胸膜中皮腫の増殖を抑えたり成長を遅らせたりします。薬は全身に回るので転移がある部位にも効果が期待できます。
細胞障害性抗がん剤:胸膜中皮腫の増殖を抑える薬です。
免疫チェックポイント阻害薬:免疫細胞が胸膜中皮腫の細胞を攻撃しやすくする薬です。
放射線療法
放射線治療は、高いエネルギーを持つ放射線をあてて胸膜中皮腫を攻撃する治療法です。胸膜中皮腫の手術の後に治癒を目的とした根治照射を行う場合があります。
これらの治療法を単独で行うこともありますし、組み合わせて(手術+薬物療法、手術+薬物療法+放射線療法等)行うこともあります。