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肺がん

肺がんとは

肺から発生する悪性腫瘍です。進行すると肺の中で大きくなるだけでなく、血液やリンパの流れに乗って別の部位へ転移を起こします。肺がんの転移部位としては、リンパ節、反対側の肺、骨、脳、肝臓、副腎が多いです。

肺がんの症状

咳、痰、血痰(痰に血が混じる)、発熱、呼吸困難、胸痛などがあります。
無症状で健康診断や人間ドック、他の疾患の経過観察中に偶然みつかることもあります。
進行して転移を起こすと、転移部位の症状(骨の痛み(腰痛や胸痛)、頭痛、吐き気、嘔吐など)で発見されることもあります。

肺がんの検査と診断

胸部X線写真(レントゲン)

検診などでまず行われる検査です。簡便ですが、小さな肺がんで心臓や横隔膜、骨の陰に隠れてしまうと見つからないこともあります。

CT検査

肺がんの部位・大きさを調べる検査です。ほとんどの肺がんが検出可能です。

MRI検査

頭部の転移がないかを確認する目的で行われます。

PET-CT検査

肺がんの進行度を調べる目的で行われます。転移の有無などを調べます。

腫瘍マーカー

血液検査で肺がんの患者さんで高値となることが多い項目です(肺がんだと必ず高値となるわけではありません)。非小細胞肺がんの腫瘍マーカーとしては、CYFRA21-1、CEA、SLX、SCC、小細胞肺がんの腫瘍マーカーとしては、NSEとProGRPがよく使われています。

細胞診・組織診断

肺がんの診断は細胞を顕微鏡で見ることで確定します。

  • 喀痰細胞診:痰の中に肺がんの細胞があるかを顕微鏡で調べます。
  • 気管支鏡検査(生検):直径5mmほどの内視鏡カメラを、鼻や口から挿入して気管支の中を観察し、がんが疑われる部位の細胞や組織を採取します。
  • CT下肺生検:CT検査で見ながら、皮膚側から肺がんが疑われる部位に針を刺して、針の中に入った細胞を調べます。

肺がんができる部位によっては、上記の検査でも肺がんの細胞が見つからないこともあります。画像で肺がんが強く疑われる場合など、総合的に判断することもあります。

肺がんの種類(組織分類)

肺がんを顕微鏡でみると大きく2つの種類に分けられます。小細胞肺がんと非小細胞肺がんです。小細胞肺がんは非小細胞肺がんと比べると、増殖速度が速く転移もしやすいですが抗がん剤や放射線の治療がよく効きます。非小細胞肺がんはさらに3つに分けられます(腺がん、扁平上皮がん、大細胞がん)。

肺がんの進行度(病期)

次の3つの因子で規定され、予後との関連が指摘され、治療法の選択にも関係します。
T:肺がんの大きさや広がりの程度
N:リンパ節への転移の有無
M:遠隔転移の有無

T—原発腫瘍

TX:
原発腫瘍の存在が判定できない,あるいは喀痰または気管支洗浄液細胞診でのみ陽性で画像診断や気管支鏡では観察できない
T0:
原発腫瘍を認めない
Tis:
上皮内癌(carcinoma in situ):肺野型の場合は,充実成分径0 cmかつ病変全体径≦3 cm
T1:
腫瘍の充実成分径≦3 cm,肺または臓側胸膜に覆われている,葉気管支より中枢への浸潤が気管支鏡上認められない(すなわち主気管支に及んでいない)
T1mi:微少浸潤性腺癌:部分充実型を示し,充実成分径≦0.5 cmかつ病変全体径≦3 cm
T1a:充実成分径≦1 cmでかつTis・T1miには相当しない
T1b:充実成分径>1 cmでかつ≦2 cm
T1c:充実成分径>2 cmでかつ≦3 cm
T2:
充実成分径>3 cmでかつ≦5 cm、または充実成分径≦3 cmでも以下のいずれかであるもの
主気管支に及ぶが気管分岐部には及ばない
臓側胸膜に浸潤
肺門まで連続する部分的または一側全体の無気肺か閉塞性肺炎がある
T2a:充実成分径>3 cmでかつ≦4 cm
T2b:充実成分径>4 cmでかつ≦5 cm
T3:
充実成分径>5 cmでかつ≦7 cm,または充実成分径≦5 cmでも以下のいずれかであるもの壁側胸膜,胸壁(superior sulcus tumorを含む),横隔神経,心膜のいずれかに直接浸潤 同一葉内の不連続な副腫瘍結節
T4:
充実成分径>7 cm,または大きさを問わず横隔膜,縦隔,心臓,大血管,気管,反回神経,食道,椎体,気管分岐部への浸潤,あるいは同側の異なった肺葉内の副腫瘍結節

N—所属リンパ節

NX:
所属リンパ節評価不能
N0:
所属リンパ節転移なし
N1:
同側の気管支周囲かつ/または同側肺門,肺内リンパ節への転移で原発腫瘍の直接浸潤を含める
N2:
同側縦隔かつ/または気管分岐下リンパ節への転移
N3:
対側縦隔,対側肺門,同側あるいは対側の前斜角筋,鎖骨上窩リンパ節への転移

M—遠隔転移

M0:
遠隔転移なし
M1:
遠隔転移がある
M1a:対側肺内の副腫瘍結節,胸膜または心膜の結節,悪性胸水(同側・対側),悪性心嚢水
M1b:肺以外の一臓器への単発遠隔転移がある
M1c:肺以外の一臓器または多臓器への多発遠隔転移がある

日本肺癌学会編:肺癌取扱い規約第8版(p4,6,2017).金原出版より引用

病期

上記T、N、M分類の組み合わせで肺がんの進行度(病期・ステージ)が決まります。

8版・2017年 N0 N1 N2 N3 M1a M1b M1c
単発 多発
遠隔転移 遠隔転移
T1 T1a(≦1 cm) ⅠA1 ⅡB ⅢA ⅢB ⅣA ⅣA ⅣB
T1b(1-2 cm) ⅠA2 ⅡB ⅢA ⅢB ⅣA ⅣA ⅣB
T1c(2-3 cm) ⅠA3 ⅡB ⅢA ⅢB ⅣA ⅣA ⅣB
T2 T2a(3-4 cm) ⅠB ⅡB ⅢA ⅢB ⅣA ⅣA ⅣB
T2b(4-5 cm) ⅡA ⅡB ⅢA ⅢB ⅣA ⅣA ⅣB
T3 T3(5-7 cm) ⅡB ⅢA ⅢB ⅢC ⅣA ⅣA ⅣB
T4 T4(>7 cm) ⅢA ⅢA ⅢB ⅢC ⅣA ⅣA ⅣB

日本肺癌学会編:肺癌取扱い規約第8版(p4,6,2017).金原出版より作成

小細胞肺がんは、肺がんが胸の中に限局した限局型と、限局型の範囲を超えて進行した進展型に分けられます。

肺がんの治療法

手術

目に見える肺がんがすべて取り切れると判断された場合に選択されます。取る肺の量により肺全摘、肺葉切除、肺区域切除、肺部分切除に分けられます。また手術のアプローチでは、開胸手術、胸腔鏡手術に分けられます。

薬物療法 

点滴や内服で肺がんの増殖を抑えたり成長を遅らせたりします。薬は全身に回るので肺以外の転移がある部位にも効果が期待できます。

細胞障害性抗がん剤:がんの増殖を抑える薬です。

分子標的薬:がん細胞に特徴的な分子を目印にしてがんを攻撃する薬です。肺がんでは、チロシンキナーゼ阻害薬や血管新生阻害薬を使用します。がん遺伝子検査の結果をもとに適切な薬を選びます。

免疫チェックポイント阻害薬:免疫細胞ががん細胞を攻撃しやすくする薬です。

放射線療法

放射線治療は、高いエネルギーを持つ放射線をあててがん細胞を攻撃する治療法です。がんの治癒を目的とした根治照射と、がんによる身体症状の緩和や延命などを目的として行う緩和照射があります。

これらの治療法を単独で行うこともありますし、組み合わせて(手術+薬物療法、薬物療法+放射線療法等)行うこともあります。

対応する診療科

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