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前立腺のがん

前立腺がんは、現代の日本人男性において急増しつつある癌腫です。その病態は、治療を必要としない軽微なものから、命に危険を及ぼす進行癌まで、まさに多様です。
前立腺がんの治療においては、その多様な進行度・病態に適した治療を選択することが重要です。早期がんにたいしては、癌の根治と機能温存の両立を目指した治療を積極的に行っております。
その一方で、進行がんに対しては、手術・放射線治療・内分泌療法を組み合わせた集学的治療を行い、長期予後をめざしています。

診断方法

直腸診

前立腺は直腸に接しているため、指でその形状を確認することができます。明らかに硬かったり、形状がいびつであったりすれば、ある程度の癌の存在が想定できますが、早期の癌に対しては、正確な判断はできません。

PSA(前立腺特異抗原)測定

自治体の検診にも採用されており、採血による検査で簡単にでき、癌の存在や病勢を予測する腫瘍マーカーとして最も有用です。癌が確定した場合にも、治療効果の判定、治療後の再発の診断にも使用します。4以上が異常値になりますが、炎症や前立腺肥大症などでも高値となることがあり、確定的ではありません。

MRI

癌の有無だけでなく、位置や大きさも描出できます。造影剤を使用することで、さらに正確な診断が可能になります。当院では比較的早期に撮影することができ、下に示す生検の時までにMRIを行い、穿刺部位を調整することで、正診率の向上を図っています。

生検

前立腺がんの存在を疑われた場合に、確定診断のために行う検査です。
前立腺の組織の一部を採取し、顕微鏡で確認し、がん細胞の存在を病理学的に確定する検査です。
直腸からエコーを挿入し前立腺を観察しながら、特殊な針を使用し経会陰的に組織を採取します。当科では、前立腺の大きさや生検の既往により、12-24針採取しています。疼痛を伴うため、麻酔が必要です。通常は腰椎麻酔で行いますが、症例によっては全身麻酔で行います。麻酔を要する手術に準じた検査となりますので、通常2泊3日の入院が必要となります。合併症は血尿、血精液症、皮下出血(血腫)などの軽度のものが多いですが、もともと排尿障害のある方は尿閉(膀胱に貯まった尿が排出できない状態)になることがあります。
また、前立腺に細菌感染をおこし高熱が出ること(前立腺炎)がありますので、その場合には入院継続の上、抗生物質による治療が必要な場合があります。

病期診断

以上の検査で、前立腺癌が見つかった場合には、病気の進行具合(病期)を調べ、治療方針を決定していきます

局所の進行程度、リンパ節転移、他臓器・骨転移の有無を、CTや骨シンチ、MRI等を使用して診断します。

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治療方法

積極的経過観察

治療を行わず、厳重に経過観察のみを行なう方法です。がんが微少で病理学的悪性度が低い場合、症状のない超高齢者の場合などが適応となります。診断1年後の再生検と、3ヶ月毎のPSA採血による経過観察が中心です。PSAの経過次第で再生検を行い、癌の増大や悪性度の増悪がみられた場合には治療を開始します。

手術療法

前立腺内にがんが留まっている場合には、前立腺全摘という手術が有効です。
特に悪性度が高い癌では、放射線治療や内分泌治療では根治できない可能性があり、手術で根治を目指します。当院では、局所進行がん(T3)の症例でも、集学的治療の一環として、手術をお勧めする場合があります。

当科では、2013年9月よりダヴィンチSiを導入し、ロボット支援下での前立腺全摘術(RARP)を行っています。
ダ・ヴィンチというロボットを使用するこの手術は、7つの関節をもち遠隔操作により繊細でかつ直感的に動かすことが可能な鉗子を使用して行われます。また、使用するカメラは3次元で最大10倍まで拡大可能です。この装置を使用することで通常の開腹手術や腹腔鏡手術ではストレスのある操作が、非常に容易で正確になります。出血が少なく傷も小さいなど、より低侵襲な手術が可能です。

当科では腹腔鏡認定医、ロボット手術プロクター(指導資格を持った医師)が常時3名以上在籍し、年間150例を超えるRARPを施行しています。

患者さんの術後QOLの向上のために前立腺がん手術後の機能温存と早期回復
前立腺がんに対して根治的な治療である全摘術を行うと、手術後に尿漏れや勃起障害が生じることが問題です。
勃起障害は、勃起神経を温存する手術方法(神経温存術)により予防できる可能性がありますが、がんが大きい場合は癌を取り残してしまう危険性があります。 尿失禁については、3ヶ月で70%、半年で90%の人がおおむね改善しますが、1日数枚のパッドを要する方が10%弱いると言われています。
しかしRARPでは、良好な視野と自由度が高い鉗子により、前立腺周囲の構造を詳細に認識し、繊細な剥離操作が行えるため、制がん性と尿禁制の温存を高いレベルで両立することが可能です。さらに膀胱尿道吻合も正確に行えるので、術後の尿道カテーテルの留置期間が短縮し、入院期間が短くなる傾向があります。 当科においては、勃起機能の温存だけではなく尿禁制を目的とした神経温存を積極的に行っています。神経温存術においても、ダヴィンチを利用することにより、Denonvillier筋膜や神経血管束をより丁寧に剥離することや、細かい血管を認識し止血することが可能になり、手術の質が向上します。

RARPを受けられる患者のうち半数以上が神経温存術を選択されており、勃起機能の温存率は、両側温存で約8割です。

放射線療法

外照射

当院ではリニアックを用いた強度変調照射線治療(IMRT)を行なっています。がんの状態に応じて36回または39回、約7-8週間の通院治療をおこなっています。主に、転移のない症例が適応となります。

合併症には、治療中に見られる急性期の副作用と治療後数年以上経過してから見られる晩期の副作用があります。治療後半から尿が近い、出にくいなどの排尿障害がしばしば見られます。これは一過性で、治療が終われば2~4週程度で改善します。
晩期合併症としては放射線性膀胱炎や直腸炎による血尿、血便や痛みなどです。痔のひどい人は直腸、肛門の副作用が強くみられるようです。直腸出血が繰り返す場合や止血剤、安静で止まらない場合には直腸鏡的にレーザーを用いて止血する場合もあります。また、射精障害はほぼ必発で、EDも徐々に増えてきます。

合併症低減のために

当科では、希望者に対し放射線性直腸炎の予防を目的としたハイドロゲルスペーサー(Space OAR®)注入を行っています。生検の時と同様に、手術室で全身麻酔または腰椎麻酔下に砕石位(足を広げる体位)で行います。肛門から挿入した超音波で確認しながら、会陰部から針を刺し、前立腺と直腸との間にハイドロゲルスペーサーを留置します。

これによって、もともとは1mm程度である前立腺と直腸の間のスペースが10㎜程度に広がり、直腸に照射される放射線量を減少します。軽症の直腸障害は75%、中等症の直腸障害は100%低下すると報告されています。

なおハイドロゲルは、約3か月から半年で吸収され、人体に悪影響はありません。

ホルモン療法

初回ホルモン治療にはLHRHアゴニスト(注射)、手術により両側の睾丸(精巣)を摘除する外科的去勢、抗男性ホルモン(アンチアンドロゲン)剤の内服があります。
これらを併用する場合もあります。全身療法ですから転移のあるステージDが適応となります。局所進行がん(ステージC)には放射線治療と9ヶ月間のホルモン治療による併用治療をしばしば行ないます。欧米のガイドラインでは2~3年の長期ホルモン治療が奨められています。

化学療法

内分泌療法の効果を認めなくなった前立腺がんは、去勢抵抗性前立腺がん(CRPC)と呼ばれて、抗がん剤の適応となります。入院して行う場合が多いですが、外来通院での投与も可能となっています。

対応する診療科

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