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膀胱のがん

膀胱とは

膀胱は下腹部にある袋状の臓器で、腎臓でつくられた尿が腎盂(じんう)、尿管を経由して運ばれたあとに、一時的に尿を貯留する働きをします(図1)。

前立腺
福岡県泌尿器科医会 https://www.fukuoka-uro.net/05_disease/11.html

膀胱には、尿が漏れ出ないよう一時的にためる機能(蓄尿機能)と、ある程度の尿がたまると尿意を感じ排出する機能(排尿機能)があります。
膀胱を含め、腎盂、尿管、一部の尿道の内側は尿路上皮(以前は移行上皮と呼んでいた)という粘膜でおおわれています。

膀胱がんとは

直腸診

膀胱がんは、尿路上皮ががん化することによって引き起こされます。そのうち大部分(90%以上)は尿路上皮がんという種類ですが、まれに扁平上皮がんや腺がんの場合もあります。

膀胱がんはCTやMRIなどの画像診断やTURBT(経尿道的膀胱腫瘍切除術)※により膀胱がんの根の深さ(T分類と言います)や転移の有無を調べ
1)筋層非浸潤性がん(表在性がんおよび上皮内がん、図2のTis,Ta,T1)
2)筋層浸潤性がん(図2のT2,T3,T4)
3)転移性がん(Tに関係なく転移を認めた場合はすべてこれにあたります)
に大別されます。

TURBTについては後ほど詳しく説明します。

膀胱がん
和歌山県立医科大学 泌尿器科
https://www.wakayama-med.ac.jp/med/urourodir/guide/bladder_cancer.html

筋層非浸潤性がん(Tis,Ta,T1)

膀胱筋層には浸潤していない表面にできたがんです。表在性がん(Ta,T1)と上皮内がん(Tis)が含まれます。

表在性がんは乳頭上を呈すため乳頭状がんと呼ばれることもあります。
表在性がんの多くは浸潤しませんが、悪性度が高い場合は浸潤がんへ移行することもあります。

筋層非浸潤性がん

通常、表在性がんの治療はTURBTで行われ、治癒しやすいことが特徴である反面、その後の経過観察中に膀胱内に再発しやすいという特徴もあり、再発の可能性(リスク)が高いと判断された場合には予防的に膀胱内注入療法※2が実施されることがあります。

上皮内がん(Tis)は、膀胱の内腔に突出せず、粘膜のみががん化した状態をいいます。粘膜は上皮とも呼ばれ、上皮内のがんという意味で上皮内がんと呼ばれています。
こちらのがんはTURBTでの完治は難しく膀胱内注入療法が行われます。

筋層非浸潤性がん

筋層浸潤性がん(T2)

膀胱の筋層に浸潤したがんです。このがんは膀胱壁を貫いて、壁の外の組織へ浸潤したり、リンパ節や肺や骨に転移を来す危険性があります。

転移性がん

原発巣の膀胱がんが、他臓器に転移した状態をいいます。膀胱がんが転移しやすい臓器としては、リンパ節、肺、骨、肝臓などがあります。

膀胱がんの症状

膀胱がんの代表的な症状は無症候性血尿といわれ、痛くもかゆくもないのに赤色や茶色の尿(血尿)が出現します。数日経過すると血尿が止まるなど一過性の場合もありますが、そうした場合も念のため泌尿器科へ受診することをお勧めします。

また痛みや頻尿といった症状を伴う血尿(症候性血尿)の場合、一般的には膀胱炎を疑いますが膀胱がんの場合でも同様の症状を認めることがあり注意が必要です。
特に膀胱炎の治療をしているのになかなか治らない場合はやはり専門医に相談することをお勧めします。

膀胱がんの診断

膀胱がんを疑った場合、以下の検査を行います。

  • 尿細胞診:尿の中にがん細胞が浮遊していないかを検査します。
  • 膀胱鏡検査:尿道から径が5mm程度の内視鏡を挿入し直接膀胱内を観察します。所要時間は5分程度です。
  • エコー検査:体の表面にあてた器具から超音波を出し、臓器で反射した超音波の様子を画像にして観察する検査です。がんが隆起しているタイプでかつある程度の大きさのものは、診断可能ですが最終的には2)の膀胱鏡で診断します。
  • CT/MRI 膀胱がんの転移や深達度(根の深さ)を調べるために行います。
  • TURBT(経尿道的膀胱腫瘍切除術) 検査と治療を兼ねております。当院では基本的に全身麻酔下に行い膀胱内に内視鏡を挿入し電気メスを用いて腫瘍を切除します。切除した腫瘍を顕微鏡検査(病理検査)に提出し、筋層非浸潤がん、筋層浸潤がんのどちらに該当するかを確認します。病理検査の結果次第で、追加治療が必要か経過観察を行うかを判断します。

膀胱がんの病期(ステージ)

ステージⅠからⅣの4段階で分類します。

T分類は膀胱がんの場合、浸潤の程度(根の深さ)を示します。
図2参照

  • ステージⅠ:筋層非浸潤性がん(表在性がんおよび上皮内がん、Tis,Ta,T1)でかつ転移の無いもの
  • ステージⅡ:筋層浸潤性がん(T2)でかつ転移の無いもの
  • ステージⅢ:筋層浸潤がん(T3から一部のT4)でかつ転移の無いもの
  • ステージⅣ:T4の一部あるいはTにかかわらず転移のあるがん全て

膀胱がんのステージごとの治療

ステージⅠ

Ta,T1の場合はTURBTでの治療が主となります。再発する可能性が高いと判断した場合は膀胱内注入療法を行います。
Tis(上皮内癌)の場合は膀胱内注入療法が必須となります。

ステージⅡおよびⅢ

膀胱全摘除術+尿路変更術が標準的治療となります。
当院では主にロボット手術支援システム(ダヴィンチ)を使用します。
患者さんの既往(過去の開腹歴など)によりロボット手術が困難と判断された場合は開腹手術を行います。

また本邦のガイドラインでは術後の再発率を低下させる目的で手術の前に抗がん剤治療(術前補助化学療法)を行うことが推奨されており当院においても積極的に導入しております。

年齢や体力的な問題により手術することが困難と判断された場合は放射線治療や抗がん剤動脈注入療法などの代替療法を行います。

ステージⅣ

転移を有する膀胱がんの場合は抗がん剤治療もしくは免疫チェックポイント阻害剤による治療を行います。血尿やがんによる疼痛を軽減する目的で手術や放射線治療を行うこともあります。

各治療の詳細

TURBT(経尿道的膀胱腫瘍切除術)

尿道から内視鏡を挿入し膀胱内を観察したのち腫瘍を電気メスで切除します。切除した腫瘍の切片を顕微鏡検査(病理検査)に提出し最終的な診断を行います。
病理検査では切り取った腫瘍が本当に悪性なのか?悪性だとしたらどのくらいの深さに達していたのか?などを詳細に調べます。
もし悪性の場合
筋層非浸潤性の膀胱がん(Ta,T1)であればこの手技によって完全に取り除かれたことになりますが、深さ以外の要素(悪性度:グレード)を詳細に吟味し必要とあらば
約1か月後に再度同じ部位を切除するセカンドルックTURBTを行うことがあります。

膀胱内注入療法(BCG膀胱内注入療法)

TURBTの結果、再発するリスクが高いと判断された筋層非浸潤性の膀胱がん(Ta,T1)や上皮内癌(CIS)と診断された場合、週に1回の頻度で合計6回、弱毒化結核ワクチンであるBCGを膀胱内に投与する治療があります。一般的に抗がん剤を膀胱内投与する治療よりも有効性が高いため標準治療として推奨されております。 特に上皮内がんに対してはTURBTでの根治が難しいためBCG治療が必須となります。

膀胱全摘除術+尿路変更術

ステージⅡおよびⅢの膀胱がんの場合1)に示したTURBTで完治することはほぼありません。仮に腫瘍をすべてTURBTで切り取ろうとすると相当深い部位まで切除することとなり膀胱に穴が開いてしまう可能性が高まります。

上記ステージの場合は先に述べましたように基本的には膀胱全摘と言って膀胱を手術ですべて摘出する必要があります。ただし、膀胱を取ってしまうと尿の排出経路を失ってしまうため尿路変更術という新しい尿の通り道を作る手術も併せて行います。

膀胱全摘術は従来は開腹手術で行われておりましたが、最近では主にロボット手術支援システム(ダヴィンチ)や腹腔鏡手術を積極的に取り入れております。これら手術の利点は出血量が開腹手術に比べて非常に少ないことが挙げられ患者さんの術後の開腹も以前に比べて格段に早くなっております。

また下記に示します尿路変更術も積極的にダヴィンチで行われており、開腹で小腸を手術するよりも術後の回復が早い印象があります。

尿路変更術の種類
  • ①回腸導管:小腸(回腸)の一部を切り離し、その腸に左右の尿管をつないだ上で腸の先端を皮膚の外に出し、尿の出口とする方法です。皮膚から出した腸の部分をストーマと呼びます。ストーマには尿をためる装具(パウチ袋)をつけ、袋に一定量の尿がたまったら、トイレに流します。
  • ②自排尿型新膀胱:小腸(回腸)の一部を切り離した後にそれを縫い合わせて尿をためる袋(新膀胱)を作成し左右の尿管を新膀胱につなぎ、さらにこれを尿道につなぐ方法です。この方法はストーマがないため審美的に優れています。しかし、新たに作成した膀胱は完全な膀胱というわけにはいかないため腹圧をかけて尿を出す必要があります。また、尿意は感じませんので、時間を決めて排尿する必要があります。
    特に寝ている間に排尿を怠ると、尿が新膀胱にたまり続けます。その状態が続きますと膀胱が大きくなりすぎて将来排尿ができなくなる危険性があります。長い経過の中で、実際に自排尿ができなくなったり、腎機能が低下したりすることがあります。
  • ③尿管皮膚ろう:①②は患者さん自身の腸を用いて行う手術であり手術時間も長くなる傾向があります、過去の手術歴により腸が使用できない場合や長い手術に耐えうる体力がない患者さんには尿管皮膚ろう造設といって、左右の尿管を直接皮膚表面に露出させそこから尿を排出する尿管皮膚ろうを作成します。
    腸を使用しない分手術の負担は軽減されますが皮膚表面に出した尿管はしばしば閉塞して尿の流れが悪くなるため尿管ステントと呼ばれる細いチューブを留置することが必要となります。このステントは基本的に月に1回は交換が必要です。
化学療法
  • 抗がん剤治療:ステージⅣあるいはステージⅡ、Ⅲの膀胱全摘術を予定されている患者さんに施行します。(術前補助化学療法)
    ゲムシタビンおよびシスプラチンを使用したGC療法が主体となりますが腎機能が低い場合にはシスプラチンの代わりにカルボプラチンなども使用します。
  • 免疫チェックポイント阻害剤:抗がん剤治療の効果が乏しい場合には免疫チェックポイント阻害剤と呼ばれる新しい薬剤を使用します。この薬剤は患者さん自身の免疫力を利用してがんを攻撃するものでオプジーボなどが一般的によく知られております。
    膀胱がんの場合には現在キイトルーダーが保険適応となり使用されております。
放射線治療

ステージⅡ、Ⅲの膀胱全摘の適応となる患者さんの中で体力的に手術に耐えられない方や諸々の事情で手術が受けられない場合に行います。

抗がん剤を動脈内に注入する動注療法も併用する場合があります。またステージⅣの症例で転移により痛みや膀胱からの出血が抑制できない場合などにそれら症状を緩和する目的で放射線治療を行うこともあります。

対応する診療科

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