肝臓のがん
肝臓とは
肝臓は成人で体重の2%、60㎏のひとでは1,200gと体内最大の臓器です。肝臓の役割は主に3つあります。
1.食事から吸収した栄養分を取り込んで体に必要な成分(筋肉、血液)を作ること
2.余分な栄養を糖や脂肪として蓄えること(これが過剰になると脂肪肝になります)
3.体内で生じた有害物質を解毒し、便に排泄することです(腎臓は尿に有害物質を排泄します)
こんな働き者の肝臓ですから負荷がかかると炎症をおこして慢性肝炎、肝硬変と炎症が進み、肝臓がんが発生します。また体中の血液が集まりますので他臓器に発生したがんから転移が起こりやすい臓器です。
肝細胞がんとは
肝臓にできる癌のことです。肝臓に負荷がかかると慢性肝炎となります。慢性肝炎では炎症により肝臓が硬くなっていきます。肝硬変になると肝臓がんが発生しやすくなります。肝細胞がんの発生する主な要因として、肝炎ウイルス感染の他、多量飲酒、肥満、糖尿病など生活習慣による脂肪肝から慢性肝炎となることが知られています。
肝臓の炎症を抑えることでがんの予防ができます。最近では肝炎ウィルスに対する有効な抗ウィルス薬が普及して炎症を抑えられるようになりました。一方で生活習慣による肝炎、いわゆる脂肪肝が増えてきています。
禁煙、節度のある飲酒、バランスの良い食事、適度な身体活動など生活習慣の改善により炎症を抑え、がんの発生を予防することができます。定期的に肝炎の程度を検査して、ご自身の嗜好と肝炎を抑える生活を両立していくことができます。
肝臓は「沈黙の臓器」と呼ばれ、炎症やがんがあっても初期には自覚症状がほとんどありません。肝硬変と診断された方は、3〜6カ月間隔での腹部超音波検査など、定期的な肝臓の画像検査を受けてがんの早期発見に努めてください。
転移性肝がんとは
肝臓以外の臓器にできたがん(大腸がんや乳がんなど)が肝臓に転移してきたものを転移性肝がんといいます。治療は肝細胞がんとは区別され、転移をする前の原発の部位(最初に発生したがん)によって治療法が異なります。
肝臓の治療について
肝臓にできたがんの治療方法は原発性肝がん、転移性肝癌のいずれにおいても、手術の他、カテーテル治療(TACE)、針による焼灼術(ラジオ波)、化学療法(抗がん剤)、粒子線治療と様々な治療法があります。
肝臓の余力と腫瘍の状態に応じて最適な治療法を組み合わせていきます。手術とラジオ波、または化学療法と手術など複数の治療法を組み合わせることで進行した状態でも治療が可能となります。また、肝臓は再生しますので一度治療を受けた後に再発しても繰り返し治療が可能なことが特徴です。
肝臓のがんと診断されたら
当院で肝臓がんを担当するのは消化器内科、消化器外科、腫瘍内科、放射線科と多岐にわたります。あなたに最適な治療法を選択していくため、科をまたいだチームとなり連携して診療にあたります。診断、治療を最善と思われる方法で速やかに提供できるよう治療計画を立てています。また心筋梗塞、糖尿病、透析など他臓器疾患の治療中の方にも専門科と協力しながら安全に治療をすることができます。
化学療法の進歩は目覚ましく、一方で複雑化しています。当院では腫瘍内科が化学療法を担当しています。腫瘍の数や原発臓器の腫瘍の状況によって、治療開始時は切除不能と判断された方でも、化学療法が良く効いた場合に外科切除を行い、良好な結果が得られる患者さんが増えてきています。
治療の進歩は日進月歩であり、最新の治療を提供できる体制がよりよい治療には欠かせません。みなさんとともに、がんに立ち向かって参りますのでがんと診断された場合には治療についてご相談ください。