脳の腫瘍
脳の腫瘍に対して手術、放射線治療、薬物療法などの
集学的な治療が可能です
当科の特徴
横浜労災病院脳神経外科は横浜市北東部の中核施設として、一般から高度先端医療までも含めて広く治療にあたるべく1991年4月の開院以来脳疾患全てを扱い治療を行ってまいりました。
当科は数多くの開頭手術を行いつつもガンマナイフとノバリスという2つの高精度の定位放射線治療装置を備えた日本でも数少ない施設の1つです。開頭手術、定位放射線治療に薬物治療を加えた集学的な治療が可能であり、当科で治療を完結できることが特徴の1つです。
脳の悪性腫瘍の治療
脳の悪性腫瘍は大きく分けて2つに分類されます。
脳原発悪性腫瘍
脳を構成する細胞から発生した腫瘍です。神経膠腫(星細胞腫、退形成星細胞腫、神経膠芽腫)や乏突起膠腫などがこれにあたります。 治療法としては可能な限り開頭手術で摘出を行います。手術は安全性向上を目指して手術中にさまざまな手術支援装置を用いて行います。 主な手術支援装置としては、
- 神経機能検査装置:手術中の運動神経の機能を持続的に観察します。
- ナビゲーションシステム:手術中のオリエンテーションをより正確にします。
- 神経刺激装置:手術中に脳神経を刺激して神経の正確な位置を確認します。
- 蛍光観察モジュールによる腫瘍の可視化を行います。
これらの機器を適宜使用し術後の後遺症を予防した手術を心がけています。
手術後に病理組織診断で正式な病名が確定した後に放射線治療と薬物療法を行います。
放射線治療は標準治療では30回照射を行いますが高齢の方では15回程度の照射で行う場合もあります。
薬物治療は標準治療ではテモゾロミドの内服を行います。場合によってはアバスチンの点滴治療も併用して行います。
開頭手術、放射線治療、薬物治療が終了後は外来でテモゾロミドの内服治療を継続して行います。
脳原発悪性腫瘍では頭皮に電極を貼り付けて持続的に交流電場によって治療を行うオプチューンという最新の治療を行うこともあります。いずれの治療も治療効果が認められた保険診療の治療となります。
外来で通院中は数か月毎にMRI検査を行い脳腫瘍の再発の早期発見に努めます。万が一再発所見を認めた場合には放射線治療やアバスチンを用いた薬物治療を行っていきます。
転移性脳腫瘍
脳以外からがんが脳に転移した腫瘍です。肺がん、乳がん、消化器がん(食道、胃、大腸、肝臓、すい臓、胆のう)、泌尿器系がん(腎臓、膀胱、前立腺、精巣)などが脳に転移する可能性が高いとされていますが、その他にも婦人科系がん(子宮、卵巣)、甲状腺がん、悪性黒色腫などさまざまな部位からのがんが脳へ転移する可能性があります。
治療は開頭手術あるいは放射線治療を行います。開頭手術は脳腫瘍が大きい場合に行いますが多くの場合は定位放射線治療を行います。脳腫瘍が大きい場合でも分割照射と言って10回程度の照射で治療する場合もあります。当院は定位放射線治療装置を2台装備しています。定位放射線治療とは、頭部をしっかりと固定した状態で脳腫瘍に対して集中的に放射線治療を行う治療法であり、短期間での治療が可能で患者さんへの負担がとても少ないことが大きな利点です。定位放射線治療装置の1つ目はガンマナイフです。
当科では開院以来ガンマナイフ治療を継続して行っており現在まで約13,000例の治療実績があります。2020年12月にガンマナイフの最新機種であるガンマナイフ・アイコンを導入しました。アイコンの最大の特徴は、頭部の固定方法において従来からの金属製のフレームを用いた固定に加えて、マスクでの固定が可能となった点にあります。
ガンマナイフでは小さな病変から大きな病変まで治療可能でありまた多数個の脳腫瘍に対しても治療が可能です。 定位放射線治療装置の2つ目はノバリスです。
当院では2014年4月にノバリスの最新機種であるノバリスSTxを日本第1号機として導入し現在まで約700例の治療実績があります。ノバリスでは多方向から照射される放射線をビームごとに強度を変化させて照射する強度変調照射(IMRT)などの多様な照射が可能であり大きな病変に対する分割照射に適しています。また脳全体に放射線治療を行う全脳照射も可能です。
当科ではこれら2台の高精度の定位放射線治療装置を適宜使用し適確で最善の治療を行っています。
脳の悪性腫瘍の患者さんへのメッセージ
脳の悪性腫瘍の患者さんは脳原発腫瘍および転移性脳腫瘍いずれも年々増加傾向にあります。多くの方が入院あるいは外来での治療を行っています。また総合病院である特徴を活かして他の診療科や診療・治療・検査部門の多職種のスタッフと常に連携をとって総合的に治療に当たっています。
病院外で病状が悪化した場合であっても24時間体制で救急外来での対応を行い迅速な処置が可能な万全のバックアップ体制を整えております。精神的に不安なに感じられている方も多くいらっしゃると思いますがいつでも気兼ねなくご相談ください。
横浜労災病院 脳神経外科の詳しい情報は当院ホームページの『脳神経外科』をご参照ください。