呼吸器内科
当科で担当しているがん(悪性腫瘍)
呼吸器内科で診療するからだの部位は、主として気管・気管支、肺、胸膜、縦隔の4つの領域になりますので、それらの領域のがん(悪性腫瘍)を担当します。この中では、肺から発症する肺がん以外は比較的まれであり、当科で担当する悪性腫瘍の大部分は肺がんです。
アスベスト(石綿)の吸入を原因として発症する「胸膜中皮腫」は比較的まれな悪性腫瘍ですが、当科はアスベスト疾患ブロックセンターと一体となり、胸膜中皮腫の診療にも力を入れています。
当科の対象となる代表的な悪性腫瘍
- 肺、肺がん、転移性肺がん
- 気管・気管支
- 胸膜、胸膜中皮腫
- 縦隔、浸潤性胸腺腫、胸腺がん
当科におけるがん診断と治療
診断
当科で行っている独自の診断法に気管支鏡検査があります。気管支鏡は呼吸器専用の内視鏡機器(ファイバースコープ)で、気管と気管支の部分的な観察と生検(肺病変、気管や気管支内に見えている病変、リンパ節の一部に対する細胞検査と組織検査)を行うことができます。気管支鏡検査の対象となるのは、前述の4つの中では肺と気管・気管支に発症する悪性腫瘍です。当院で行われる気管支鏡検査は、通常の気管支鏡と超音波気管支鏡の2つがあります。
肺がんが疑われても、気管支鏡検査が適応とならない方、気管支鏡検査で診断がつかなかった方、希望されない方につきましては、IVR科や呼吸器外科にそれぞれ依頼し、CTガイド下肺生検、外科的生検を選択することになります。
縦隔と胸膜の腫瘍の診断については、多くの場合、胸腔鏡検査あるいは縦隔鏡検査によって行われており、当院では主に呼吸器外科が担当しています。一部の患者さんでは、CTガイド下生検を行うことがあります。
治療
前述した4つの領域の悪性腫瘍の中で、切除不能(手術対象とならない)あるいは切除を希望されない方を当科で担当しています。
当科の治療は、放射線治療、がん薬物治療、緩和ケアが3本柱です。このうち、緩和ケアはすべての方が対象となります。放射線治療とがん薬物治療の対象は、悪性腫瘍の種類や進行ぐあいで異なり、それぞれを単独で行ったり、組み合わせて行ったりします。
放射線治療の適応となる場合には放射線治療科と、ガンマナイフ治療の適応となる場合には脳神経外科と相談を行いながら、治療方針を決めています。
肺がんにおける薬物治療は、抗がん剤、分子標的治療薬、がん免疫治療薬の3つの種類があり、肺がん治療ガイドラインと最新の臨床試験の結果を確認しながら、患者さん一人ひとりの状況に応じた適切な組み合わせを選択します。
一方で、当科で担当する肺がん以外の悪性腫瘍の薬物治療は、まだまだ十分に発展していないのが現状です。
当科における肺がん診療の特色
現在、とくに肺がんにおける薬物治療の進歩は目覚ましいものがあり、一部の方では長期生存が期待できるようになってきています。
当科では、肺がんに対する最新の薬物療法を遅滞なく取り入れて、患者さんそれぞれに合った最適治療を常に提供できるように心がけています。
当科は呼吸器外科との定期的なカンファレンス(検討会)を週1回開催し、最適な診断法と治療を選択する体制をとっており、両科で『呼吸器センター』として肺がん診療にあたっています。
患者さんへの一言
肺がん診療は、呼吸器センター医師や他の診療科の医師だけではなく、がん診療にかかわる当院のすべての職員の支援・連携で成り立っています。
そして、がん診療の主役は患者さんご本人であり、当院、地域医療、そしてご家族やご友人が患者さんを支えていくことで最適な診療提供が可能となると考えています。