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病理診断科

病気の種類をきめる

患者さんが『がん』の治療をはじめようとするときには、『がん』の診断がついていなくてはなりません。では、誰がどのように『がん』の診断をしているのか、ご存知でしょうか。

これまでの医学研究から、『がん』を顕微鏡で観察すると、正常とは違う細胞の集まりからなることがわかっています。そこで専門の医師と臨床検査技師がチームになり、病変の一部を切り取ったり針を刺して得られた検体、あるいは痰や尿をくわしく調べることによって、『がん』の細胞を見つけだす作業をしていて、病院内でこの仕事をおこなっている部門が病理診断科です。

横浜労災病院の病理診断科では年間約8,000件の組織診断と細胞診断をしており、その約四分の一が『がん』関連で、対象は頭から足の先まで全身のあらゆる臓器に及びます。
もちろん人間の病気は『がん』以外にもたくさんありますから、病理診断はまず『がん』を含む腫瘍と、それ以外にわけることからはじまります。

腫瘍の種類をきめる

腫瘍とはなんでしょうか。
簡単に言えば、細胞の設計図である遺伝子に異常がおこり、細胞が必要以上に増え続ける状態で、おおまかにふたつの種類にわかれます。

ひとつは、その場にとどまりゆっくり大きくなるもの。もうひとつは、急速に大きくなり、血液やリンパ液の流れに乗って別の場所にあらたな病変をつくる可能性のあるものです。前者が良性腫瘍、後者が悪性腫瘍で、一般に悪性腫瘍を『がん』とよんでいます。
『がん』の細胞が見つかったら、次にそれがどういう種類かを調べなくてはなりません。たとえば胃にできた『がん』には、表面をおおう粘膜上皮、平滑筋などの間質系細胞、リンパ球などの炎症細胞に由来するものなどが区別され、それぞれ治療方法が異なるからです。これと並行して、実際の治療にあたる臨床科では、病変がどこまで広がっているか、画像診断などで検討します。

また、良性か悪性か判断のむずかしい場合には、手術で取り出した病変を詳しく調べて、最終的な結論を出すこともあります。

治療をきめる

『がん』の治療には大きくわけて、手術で取り除く、放射線をあててがんの増殖をおさえる、薬をつかう、の3種類があります。
『がん』の種類と大きさ、進行度などによって標準的な治療法があり、それに患者さんの年齢や体力を考えあわせて最終的な治療方針がたてられ、治療が始まります。

いくつかの治療の組み合わせ、たとえば放射線治療や薬物療法をおこなってから手術されることもあり、その場合には、手術前の治療がどれくらい効いていたかを判定することも病理診断科の仕事になります。

将来にそなえる

人の顔がそれぞれ違うように、『がん』にも個性があることがだんだんわかってきました。そこで、『がん』の原因となった遺伝子の異常を調べ、その人に合った治療や薬剤を選択していくこと、すなわち医療を個別化することが始まっています。たとえば同じ種類の『がん』であっても、AさんとBさんで原因となった遺伝子の異常が違えば、別々の薬剤を使うこともあるのです。

また特定の遺伝子に異常のある人は、何らかの『がん』になりやすいということも知られてきました。これらの分野はまさに日進月歩で、一度病理診断に提出された検体を用いることが多いため、将来の各種分析にそなえ、適切な状態で検体を管理・保存しておくことも病理診断科の大事な役割です。

終わりに

以上のように、病理診断科では特定の臓器にかたよらない、幅広い活動をしています。
対象が広いだけではなく、二次・三次治療の薬剤選択や腫瘍の発生予測など、将来を見据えた仕事ともかかわるようになってきました。

患者さんと直接顔を合わせることはなく、とても地味な部門ですが、横浜労災病院病理診断科では現在、2名の病理医と9名の臨床検査技師が日夜、これらの仕事に従事しています。

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