耳鼻咽喉科
当科におけるがんの診断から治療まで
がんには二つの名前があります。一つは場所による名前、もう一つは顕微鏡で見たミクロの世界におけるがん細胞の種類による名前です。
場所による名前は、画像検査(CTやMRI検査)や内視鏡検査で確定します。細胞の種類による名前は、組織を一部分切り取り(生検)、体の外に取り出して病理組織検査で確定します。腫瘍が生検しやすい部分にあれば外来で行うことが出来ますが、そうでない場合入院して全身麻酔下に生検することがあります。また、腫瘍が小さい場合、一部分ではなく全部を取ってしまうことで、診断と治療とを兼ねることがあります。
次に全身の追加検査を行います。通常、上部消化管内視鏡検査(胃カメラ)とPET検査(他院で行います)を追加します。のどは空気や食べ物、飲み物の通り道であり、喫煙やアルコールががんの発生に関連すると言われています。そのため、食道や胃のような上部消化管にも、同時多発的に病気が存在していることがあるため、胃カメラを行います。咽頭癌では食道や胃に腫瘍の病気が見つかる患者さんが15%程度と言われています。またPET検査は、15㎜ほどの大きさがあれば体のどこにがんが転移していてもわかる検査です。
以上の検査から、がんの進み具合を総合的に評価し、ステージ分類をした後、治療方法が決まってきます。早期癌であれば1回の手術で終わることもありますし、放射線治療だけを行うことがあります。進行癌であれば、大きな手術を行った後、放射線治療を追加することもあります。当科では、ガイドラインに則った標準治療を選択します。標準治療とは、これまでの経験によってどの治療方法が良いのか科学的に証明されているものです。患者さんの病態に合わせて、最も治療効果の高いものを選ぶことになります。
当科で対応しているがん疾患
- 聴器がん
- 鼻副鼻腔がん
- 口腔がん
- 咽頭がん
- 喉頭がん
- 唾液腺がん
- 原発不明がん
- 甲状腺・副甲状腺がん
当科におけるがん治療の特色
当科ではガイドラインに則って標準治療を行います。手術、放射線治療、抗がん剤を、それぞれ単独、あるいは組み合わせて、患者さんにとって最も効果の高い治療方法を選択します。
手術については大学病院やがん専門病院と同等の手技を行います。欠損部が大きい場合の再建手術は、形成外科や消化器外科と共に行います。放射線治療は放射線治療科と共に行い、標準治療であるリニアックを中心に、再発症例には定位放射線治療を行うことも可能です。
抗がん剤投与は単独投与だけでなく、放射線治療との組み合わせや、がん免疫療法も行います。外来化学療法室と連携して通院での抗がん剤投与を行うこともあります。
がん診療への思い
耳鼻咽喉科で扱う領域には、聴覚、嗅覚、味覚などの感覚器や、呼吸、咀嚼、嚥下、発声など生命維持に重要な機能を担う臓器が含まれます。そのため病気によって日常生活が大きく損なわれます。
そしてがんは非常に治りにくい病気です。患者さんとご家族に寄り添い、最も良い治療方法を探し、共に治療を行っていくことを心掛けています。
患者さんへの一言
インターネットが発達したことで、様々な情報が飛び交っています。
しかし、その情報が正しいのか、自分に当てはまるのかは分からないことが多いです。
標準治療ではない誤情報に惑わされず、正しい知識を持って治療を行うことが大切です。当科では常に最新の標準治療を行っています。一人で悩むことなく、我々医療者やご家族とともに、がんの治療に立ち向かっていきましょう。